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『千羽鶴』(せんばづる)は、川端康成の長編小説。川端の戦後の代表作の一つで、芸術院賞を受賞した作品である。亡き不倫相手の成長した息子と会い、愛した人の面影を宿すその青年に惹かれた夫人の愛と死を軸に、美しく妖艶な夫人を志野茶碗の精のように回想する青年が、夫人の娘とも契る物語〔山本健吉「解説」(文庫版『千羽鶴』)(新潮文庫、1989年)〕。匂うような官能的な夫人の肉感に象徴される形見の志野茶碗の名器の感触と幻想から生まれる超現実な美的世界と、俗悪に堕した茶の湯の世界の生々しい人間関係が重なり合って描かれている〔〔三島由紀夫「解説 千羽鶴」(『日本の文学38 川端康成集』)(中央公論社、1964年3月)〕。 『雪国』や『山の音』同様、『千羽鶴』も最初から起承転結を持つ長編としての構想がまとめられていたわけではなく、1949年(昭和24年)から1951年(昭和26年)にかけて各雑誌に断続的に断章が連作として書きつがれたが、一章ごとが独立の鑑賞に堪え、全体として密度が高い小説となっている〔。なお、続編に未完の『波千鳥』(なみちどり)があり、近年はこれと合わせて一つの作品として扱われ、論じられることが多い。 == 発表経過 == まず1949年(昭和24年)に、雑誌『読物時事別冊』5月号(第3号)に「千羽鶴」(挿絵:猪熊弦一郎)、雑誌『別冊文藝春秋』8月号(第12号)に「森の夕日」が断章として分載された。翌1950年(昭和25年)には、雑誌『小説公園』3月号(第1巻第1号)に「絵志野」、同誌11月号(第1巻第8号)と12月号(第1巻第9号)に「母の口紅」(挿絵:佐藤泰治)が分載された。翌1951年(昭和26年)には、雑誌『別冊文藝春秋』10月号(第24号)に「二重星」が掲載された。 そして以上の断章を纏めた単行本『千羽鶴』が1952年(昭和27年)2月10日に筑摩書房より刊行され、芸術院賞を受賞した。 続編となる『波千鳥』(なみちどり)は、1953年(昭和28年)、雑誌『小説新潮』4月号(第7巻第5号)に「波千鳥」(挿絵:佐藤泰治)、5月号に「旅の別離」(「旅の別離」1章から3章)、6月号に「父の町」(「旅の別離」4章と5章)、9月号に「荒城の月」(「旅の別離」6章と7章)、10月号に「新家庭」(「新家庭」1章と2章)、12月号に「波間」(新家庭」3章と4章)が分載された。翌1954年(昭和29年)、同誌3月号に「春の目」、7月号(第8巻第9号)に「妻の思ひ」が分載された。 しかし、これ以降は取材ノートが盗難にあったために、この8回までで中断された。そして、章として完結している6回までの断章を纏めた未完作が『千羽鶴』の続編として、1956年(昭和31年)11月25日に新潮社より刊行の『川端康成選集第8巻』に初収録された。なお、削除された7回と8回分の章は、川端没後の『川端康成全集第22巻・未刊行作品集(2)』に収録された。 文庫版は、『千羽鶴』と続編『波千鳥』と合わせて新潮文庫より刊行されている。翻訳版も1957年(昭和32年)のエドワード・サイデンステッカー訳(英題:“Thousand Cranes”)をはじめ、世界各国で行われている。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「千羽鶴 (小説)」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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